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長野県信濃美術館「アート・コミュニケータ基礎講座」の講師を担当しました

2021年4月10日にリニューアルオープンする長野県信濃美術館からの依頼を受け「アート・コミュニケータ基礎講座」の講師を担当しました。この講座は、さまざまな価値観を持つ多様な人々を結びつける「出会いと学びの場」の実現を目指して公募された36人の「アート・コミュニケータ」のみなさんを対象に全6回実施され、このうち4回目の講座(2020年12月12日実施)で西岡、市川、和田が講師をつとめました。

午前10時30分から午後3時までという長時間に渡るワークショップの実施にあたって、半年以上前から美術と手話プロジェクトのメンバー全員で何度も議論を重ねてきました。さらに、美術館の担当スタッフも交えてのオンライン会議も実施し最終的な講座内容を決定しました。障害のある当事者が講師を担当するのは今回だけとのことでしたので、聞こえない人の特性や聞こえない人を取り巻く美術館の状況を知ってもらうことに加えて、他のさまざまな障害のある人や、マイノリティとされる人たちの存在をも意識して活動することができる人材となって欲しい、という思いを込めて1日の講座を組み立てました。当日は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、対面とオンラインのハイブリッド形式での実施となりましたが、美術館スタッフのみなさんのサポートにより、非常にスムーズに運営をすることができました。

プログラムは2つのグループワークとさまざまな情報を伝える講義で構成しました。
導入のグループワークでは「聞こえない人、聞こえにくい人について思うことを書いてみよう」というテーマで短いワークショップを実施。日頃気づいていない他者の存在に意識を向けることからスタートしました。グループワークに続いて、「聞こえない人の特徴や生活上の工夫」「障害と社会」「4つのバリア」「手話と手話通訳」「聞こえない人と美術」のテーマを設定して講義を実施、参加者のみなさんと共有しました。午前中の講義を受けて、午後はその集大成として、「聞こえない人と美術館をフルに楽しむ」ことをテーマに、一切の制約を取り払い理想の(夢の)美術館のプログラムやサービスを考えるグループワーク、「ドリームプラン〜聞こえない人と、美術館を丸ごと楽しもう!」を実施しました。各グループで活発な議論が交わされ、まさに夢のあるユニークなアイデアが飛び出し、あっという間に時間が過ぎました。講座が終わった後のフリートークは1時間以上活発なやりとりが続き、みなさんの熱意が伝わってきました。

アート・コミュニケータの皆さんからの感想の一部をご紹介します

・手話を間近で見た経験は初めてです。あたたかみと活き活きとした人間性を感じさせるとても豊かなものでした。
・期待を超える面白さでした。
・「目からウロコ」の発見や気づきだらけの講座でした。
・「ドリームプラン」を考えるワークショップは、各チームの色が出て多様性を感じました。
・「障害者とアート」は以前から興味のあるテーマでしたが、今回の講座はそれを具体的に考えるとても良い機会となりました。
・障害のある人の<ために>プログラムを作るのではなく、さまざまな感覚を補い合って、誰もが学べるようなプログラムをつくりたいと思いました。

この春リニューアルオープンされる美術館で「アート・コミュニケータ」のみなさんが、さまざまな来館者と豊かな関係性を築いていく姿が目に浮かびます。みなさんのご活躍を心からお祈りしています。

長野県信濃美術館「アート・コミュニケータ」について
https://www.npsam.com/page/art-communicator

写真:撮影・写真提供/長野県信濃美術館

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