ニュース

1/19 ⽔⼾芸術館現代美術センター 「冬のこらぼ・らぼ」プログラム    「美術と手話」の企画協力を行いました。

・プログラム:冬のこらぼ・らぼ「美術と手話」
・鑑賞した展覧会:アートセンターをひらく 第Ⅱ期
・開催日:2020年1月19日(日)
・参加人数:10名(聞こえない人・聞こえにくい人3名、聞こえる人7名)
・主催・場所:水戸芸術館現代美術センター
・協力:美術と手話プロジェクト

鑑賞した展覧会「アートセンターをひらく」は、アートセンターに求められる役割を探る企画です。昨春行われた「アートセンターをひらく 第Ⅰ期」で滞在制作や第Ⅰ期からの長期ワークショップを行ったアーティスト7名による作品が、第Ⅱ期で展⽰されていました。
聞こえない人・聞こえにくい人、聞こえる人が一緒に美術鑑賞を楽しめるように、「筆談でみる」 「手話でみる」という2つの方法で2作品を鑑賞。2グループにわけ、水戸芸術館のボランティア、野中さんと石崎さんが各グループのファシリテータとなり、プログラムを進行しました。

〇「筆談でみる」鑑賞・・・エマニュエル・レネ「なぜ、キャベツくんが?」2019 の作品についての対話をすべて筆談で進める

撮影:美術と手話プロジェクト

〇「手話でみる」鑑賞・・・潘逸舟「わたしは家を運び、家はわたしを移す」2019 の映像作品を手話通訳付きで自由に意見を交わす

まずはひとりでじっくり作品を見たら、参加者たちと筆談や手話で感じたことを話し合い、それを見(聞き)比べながら対話を掘り下げていきます。
エマニュエル・レネ作品「なぜ、キャベツくんが?」は筆談で、潘逸舟作品「わたしは家を運び、家はわたしを移す」は手話で鑑賞します。

美術と手話プロジェクトのこれまでの活動では、主に「手話でみる」鑑賞が中心。「筆談でみる」鑑賞は新たな試みです。筆談での鑑賞方法は、3つの手順で行います。

①参加者が感じたこと、伝えたいことを吹き出しに書いて発表
②他の参加者は、吹き出しへの疑問や感想(ツッコミ)を付せんに書き、吹き出しに貼る
③吹き出しを模造紙に貼り、書いてある言葉を元に模造紙上でさらに筆談で対話を進めていく
ファシリテータが関わることで、さらに対話が深まります。

エマニュエル・レネ「なぜ、キャベツくんが?」2019 の作品は筆談で鑑賞。

①吹き出しで感想を発表


②他の参加者は付せんを使って吹き出しに感想などを貼っていく


③模造紙上でも筆談を重ねる
撮影:美術と手話プロジェクト

最後に展示室に設けられたカフェでお茶、コーヒーなど飲みながら、鑑賞の振り返りを行いました。


ひらくカフェでの振り返り

「さまざまな人たちと⼀緒に鑑賞しながら、作品の多様な見方を楽しむ鑑賞プログラムを行いたい」という水戸芸術館のリクエストではじまったプログラム。昨夏から打ち合わせを重ねました。
水戸芸術館は、長年活動する鑑賞ボランティアが在籍していることが特徴のひとつです。美術と手話プロジェクトは、その「個性」を生かしたプログラムにしたいと考えました。
また、今回の企画では「筆談でみる」経験が豊富な「聞こえない鑑賞人」の小笠原さんに、筆談鑑賞の流れについて助言をいろいろといただきました。

わたしのグループに入ったボランティアの野中さんは、鑑賞前は普段とは違う鑑賞の進め方でうまくできるだろうか、と不安でいっぱいだったそうです。でも、はじまってみると作品の前での対話は笑いが絶えることがなく、野中さんも積極的に発言しつつ、みんなの「気づき」を得るためのヒントを状況に応じて少しずつ言ってくれました。最後に「30年で一番面白い鑑賞会だった!!」と最後にコメントしてくれたのがとても印象的でした。

今回の企画で経験したことは継続して取り組んでいきたいと思っています。
ともに取り組んでくれた方々に感謝申し上げます。

文:西岡克浩
写真(クレジット表記のないもの):撮影/根本譲 写真提供/水戸芸術館現代美術センター

ニュース一覧にもどる